2026年7月23日、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社が、所属タレントに対する悪質な誹謗中傷を行った人物との示談成立を発表した。示談金額は1投稿につき150万円。SNS上の匿名発信がもたらす法的責任の重さを改めて示す、VTuber保護の新たな事例だ。

示談成立の概要

カバー社は7月23日、公式サイトを更新し、ホロライブ所属タレントに対する権利侵害行為への対応状況を公開した。

項目内容
発表日2026年7月23日
運営会社カバー株式会社
対象事業者ホロライブプロダクション所属タレント
法的手続き発信者情報開示請求(裁判所認められた)
示談金額150万円(対象1投稿あたり)
示談条件謝罪文提出 + 損害賠償金支払い + 今後の誹謗中傷禁止確約 + 違約金義務

裁判所がタレントへの権利侵害を認めたことを受け、カバー社は発信者情報開示請求を通じて投稿者を特定。その後の交渉により示談が成立した。

なお、150万円という金額は当事者間の示談によって決まった損害賠償金であり、裁判所が賠償額として命じたものではない。裁判所が認めたのは、発信者情報開示請求の前提となる権利侵害の存在だ。

中傷の内容:何が問題だったのか

カバー社の発表によれば、対象者の投稿はきわめて悪質なものだった。

イベント欠席を「嘘」と断定

所属タレントがイベントを欠席した際、正当な理由があったにもかかわらず「嘘をついている」と決めつけて中傷した。

私生活・異性関係への卑猥な憶測

タレントの私生活や異性関係を巡り、根拠のない卑猥な憶測を交えながら、執拗に罵倒・侮辱する投稿を行っていた。

カバー社は一連の投稿について「所属タレントの活動を著しく妨害するきわめて悪質なもの」と説明している。

示談条件の詳細

示談には以下の条件が盛り込まれた。

  • 対象者による謝罪文の提出
  • 損害賠償金の支払い(1投稿あたり150万円)
  • 今後、カバー社所属タレント全員に対する誹謗中傷行為を行わないことの確約
  • 上記に違反した場合の違約金支払い義務

対象となったタレント及び投稿者の氏名やアカウント名は公表されていない

カバー社の2025年度法的対応は149件

今回の示談は、カバー社が継続的に進めている法的対応の一環だ。2026年4月に公開された2025年度の対応報告によれば、以下の実績がある。

期間内容件数
2025年4月〜2026年3月訴訟・刑事事件を含む法的対応149件
同上X・YouTube・TikTokにおける投稿削除対応1,411件

カバー社は2026年3月にも、所属タレントに関する事実無根の情報をSNSに投稿した人物と示談成立を報告している。次回の対応状況公表は2026年10月ごろを予定している。

SNS上の発言が法的責任を負うケース

今回の事例は、SNS上の匿名発信でも法的責任が問われることを改めて示している。

名誉毀損・侮辱に該当する場合

虚偽の事実に基づく誹謗中傷は名誉毀損侮辱に該当する可能性がある。

プライバシー権の侵害

根拠のない憶測を含む私生活上の情報の流布は、プライバシー権の侵害になり得る。

発信者情報開示請求

裁判所が権利侵害を認めた場合、発信者情報開示請求によって匿名投稿者の特定が可能になる。裁判所の認定を受ければ、IPアドレスや契約者情報の開示が命じられる。

VTuber業界の誹謗中傷問題

VTuber業界では、匿名性を悪用した誹謗中傷が大きな問題になっている。

2026年7月には、にじさんじを運営するANYCOLORも白雪巴への誹謗中傷で140万円の示談成立を報告。個人勢VTuberの花凪まなは虚偽情報の流布を認め活動終了する事態も起きた。

事例運営会社示談金額日付
ホロライブ所属タレント誹謗中傷カバー株式会社1投稿150万円2026年7月23日
にじさんじ白雪巴誹謗中傷ANYCOLOR複数人物で合計140万円2026年7月15日

カバー社の呼びかけ

カバー社は今回の声明で、SNSへの投稿や配信上のチャット、コメントについて「良識のある意見表明・情報発信」を心がけるよう強く要請している。

所属タレントが安心して活動に専念できる環境を守るため、今後も権利侵害行為に対して法的措置を講じると表明。次回の対応状況は2026年10月ごろに公表する予定だ。

よくある質問(FAQ)

Q: なぜ1投稿で150万円なのか?

A: 150万円は当事者間の示談金額であり、裁判所が賠償額として命じたものではない。裁判所が認めたのは権利侵害の存在で、示談交渉でこの金額が合意された。投稿内容の悪質さ(名指しでの執拗な中傷、私生活への卑猥な憶測)が示談金に反映されたと考えられる。

Q: 投稿者の氏名は公開されるのか?

A: 今回の発表では投稿者の氏名やアカウント名は公表されていない。発信者情報開示請求によって特定された人物との間で示談が成立しただけであり、公開はされていない。

Q: ホロライブ以外のVTuberでも同様の対応は行われるのか?

A: カバー社は「今後、当社所属タレント全員に対する誹謗中傷を行わないことの確約」を示談条件に含めている。ホロライブプロダクション全体に適用される対応方針だ。またANYCOLOR(にじさんじ)も同様に法的対応を進めており、VTuber業界全体で誹謗中傷への法的対応が強化されている。

Q: 149件の法的対応とはどのようなものか?

A: 2025年4月から2026年3月の1年間で、訴訟や刑事事件を含む法的対応が149件行われた。またX・YouTube・TikTokにおける投稿削除対応は1,411件に上る。誹謗中傷だけでなく、著作権侵害やプライバシー侵害など多岐にわたる。

Q: SNS上の匿名投稿でも特定されるのか?

A: 裁判所が権利侵害を認めた場合、発信者情報開示請求によってIPアドレスや契約者情報の開示が命じられる。それらの情報から投稿者の特定が可能になる。匿名だから安全という保証はない。

Q: カバー社は今後どのような方針で対応する?

A: カバー社は「良識のある意見表明・情報発信」を心がけるよう強く要請し、所属タレントが安心して活動に専念できる環境を守るため、今後も法的措置を講じると表明。次回の対応状況公表は2026年10月ごろを予定している。

関連記事

出典