第83回ベネチア映画祭 日本映画3作品出品決定 市川團十郎・塚本晋也・是枝裕和
2026年7月23日、第83回ベネチア国際映画祭への日本映画3作品の出品が正式発表された。 是枝裕和監督「ルックバック」と塚本晋也監督「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」が金獅子賞を争うコンペティション部門に、三池崇史監督の初ドキュメンタリー「襲名」はアウト・オブ・コンペティション部門に選出。日本の芸術映画が国際舞台で一斉に存在感を示す異例の展開となった。
世界三大映画祭のひとつであるベネチア映画祭に、日本の長編映画が1年に3作品出品されるのは極めて異例。9月2日にイタリア・ヴェネツィアで開幕し、最高賞・金獅子賞を含む全19部門の受賞者が決まる。日本映画ファンにとって2026年秋は、まさに「映画祭の秋」と呼ぶにふさわしい。
TL;DR - ベネチア映画祭 日本出品まとめ
| 作品 | 監督 | 部門 | 出演 | 公開日 |
|---|---|---|---|---|
| ルックバック | 是枝裕和 | コンペティション | 出口夏希、蒔田彩珠 | 9月11日 |
| ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか? | 塚本晋也 | コンペティション | リリー・フランキー、ジェフリー・ラッシュ | 9月11日 |
| 襲名 | 三池崇史 | 公式出品 | 市川團十郎、市川新之助 | 9月25日 |
ベネチア映画祭とは
ベネチア国際映画祭は1932年創設の世界最古の映画祭で、カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭と並ぶ「世界三大映画祭」のひとつ。最高賞は**金獅子賞(レオーネ・ドーロ)**で、世界で最も権威ある映画賞の一つ。
2026年は9月2日に第83回大会が開幕し、イタリア・ヴェネツィアのリド島などで上映される。コンペティション部門の作品は金獅子賞をはじめとする審査員賞を競い、オフ・コンペティション(公式出品)部門は映画祭の特別上映として紹介される。
出品作① - 是枝裕和「ルックバック」(コンペティション)
作品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 監督 | 是枝裕和(63) |
| 出演 | 出口夏希(24)、蒔田彩珠(23) |
| 原作 | 藤本タツキ「ルックバック」(集英社) |
| 脚本・編集 | 是枝裕和 |
| 製作 | 真田康之 |
| 製作会社 | K2 Pictures、集英社 |
| 公開日 | 9月11日(ワールドプレミア) |
| 撮影地 | 秋田県にかほ市 |
ルックバックのあらすじ
4コマ漫画が得意な人気者の藤野(出口夏希)と、ひきこもりでひたすら絵を描いていた同級生の京本(蒔田彩珠)の出会いと成長を描く。藤本タツキ氏の同名漫画の実写化で、2人の少女の友情とart Through the lens of manga creation, the film explores themes of creativity, connection, and the bittersweet nature of growing up.
是枝監督のコメント
「コロナ禍で『不要不急』にカテゴライズされた職業に従事していた人間は、自分が心血を注いできた対象への愛や時間を否定されたような気がしてしばし、立ち止まり、悩んだのではないか? そんな丸まった自分の背中を優しく抱いて背筋を伸ばし、もう一度前を向いて歩かせてくれたのが藤本タツキさんの『ルックバック』だった。31年前、僕のデビュー作を上映してくれたベネチア国際映画祭でこの作品を再びお披露目出来ることに特別な感慨を抱いている。」
ベネチアでの注目ポイント
是枝監督のコンペティション部門への出品は、4度目。1995年デビュー作「幻の光」で金のオゼッラ賞を受賞、2017年「三度目の殺人」、2019年「真実」に続き、約7年ぶりのコンペ復帰となる。出口夏希と蒔田彩珠も海外映画祭初参加で、2人の反応も注目される。
出品作② - 塚本晋也「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」(コンペティション)
作品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 監督 | 塚本晋也(66) |
| 出演 | リリー・フランキー(62)、ジェフリー・ラッシュ(75)、ロドニー・ヒックス(52) |
| 原作 | アレン・ネルソン『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』(講談社文庫) |
| 脚本・撮影・編集 | 塚本晋也 |
| 公開日 | 9月11日 |
| 撮影地 | タイ、米ニューヨーク、日本、ベトナム(4カ国) |
ネルソンさんのあらすじ
18歳で海兵隊に志願しベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンの自伝を原作に、加害者の視点から描く戦争の恐ろしい現実と精神的痛みをつづる。ネルソン氏は帰還後、日本全国で1200回以上の講演を行い「ほんとうの戦争」を語り続けた。
塚本監督のコメント
「世界がきな臭くなってきた今、見ていただきたい。」
出演者の豪華さ
本作の最大の特徴は、ハリウッドと日本が融合した豪華キャスト。96年「シャイン」でアカデミー主演男優賞を受賞したオーストラリアの名優ジェフリー・ラッシュが医師役、ブロードウェーミュージカル「RENT」のオリジナルメンバーロドニー・ヒックスが主人公ネルソン役を演じる。日本からはリリー・フランキーがPTSDを患った父親を持つ黒井役で出演。
ベネチアでの注目ポイント
塚本監督のコンペティション部門への出品は、4回目。09年「鉄男 THE BULLET MAN」、14年「野火」、18年「斬、」に続き、金獅子賞を競う。日本映画がコンペ部門に出品されるのは、23年に濱口竜介「悪は存在しない」が審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞して以来3年ぶり。
出品作③ - 三池崇史「襲名」(アウト・オブ・コンペティション)
作品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 監督 | 三池崇史 |
| 被撮影者 | 13代目市川團十郎白猿(48)、市川新之助(13) |
| ジャンル | ドキュメンタリー(三池監督初) |
| 公開日 | 9月25日 |
| 撮影期間 | 3年以上 |
襲名のあらすじ
13代目市川團十郎白猿の襲名(名跡継承の儀式)を3年以上かけて追ったドキュメンタリー。歌舞伎の名門・市川家が400年以上にわたり受け継いできた伝統芸能の継承と、團十郎個人の葛藤を描く。コロナ禍での2年半の襲名延期を乗り越えた記録でもあり、襲名披露公演の舞台裏も収録されている。
團十郎の長男市川新之助(13)も映像に登場し、歌舞伎の伝統を次世代へつなぐ「継承」の意味が問われる。
三池監督のコメント
「お久しぶり、ベネチア。13代目團十郎という男とその息子の記録、その個性的な人間性と洗練された芸に心を震わせていただきたい。過度な演出と感動の押し売りを避けた人間賛歌ドキュメントです。では、劇場でお会いしましょう。血がいっぱい飛び散ったりしないので安心してお越しください。」
ベネチアでの注目ポイント
三池監督の作品がベネチア映画祭に出品されるのは、16年ぶり。2010年に「十三人の刺客」「ゼブラーマン」「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」が3作品同時公式上映されたのが最後。今回が初のドキュメンタリー作品という新境地にも注目が集まる。
歌舞伎の世界と映画祭の組み合わせは異色だが、文化芸術の「継承」というテーマは国境を超える普遍的な価値を持つ。日本伝統芸能を世界に発信する貴重な機会となるだろう。
日本映画がベネチアで3作品同時出品の意義
日本映画の国際的浸透
ベネチア映画祭に日本映画が3作品同時に出品されるのは近年稀有。2026年は年初から日本映画が国際舞台で注目を集めており、5月のカンヌ映画祭では濱口竜介と是枝裕和が同時出品。秋のベネチアでも同様の「ダブル・インパクト」が期待される。
3作品のテーマ比較
| 作品 | テーマ | 世界観 |
|---|---|---|
| ルックバック | 友情・創作・成長 | 日本の地方都市、少女たちの青春 |
| ネルソンさん | 戦争・加害・救済 | ベトナム戦争、国際合作 |
| 襲名 | 継承・伝統・家族 | 歌舞伎、日本文化 |
3作品とも「伝統と革新」「個人の葛藤」というテーマを共有しつつ、ジャンルもドキュメンタリー、戦争ドラマ、青春映画と多岐にわたる。日本の映画制作の幅広さが世界に示される機会となる。
今後の展望
9月2日の開幕から11日間の上映期間を経て、コンペティション部門の受賞者が9月12日頃に発表される。金獅子賞受賞はもちろん注目だが、出口夏希・蒔田彩珠の新世代女優、リリー・フランキー×ジェフリー・ラッシュの異色共演、三池監督のドキュメンタリー初挑戦など、日本映画ファンにとって見どころが満載の回となっている。
よくある質問(FAQ)
第83回ベネチア映画祭はいつ開催される?
2026年9月2日にイタリア・ヴェネツィアで開幕し、9月12日頃まで開催される。コンペティション部門の受賞者が発表されるのは最終日付近。
日本映画はいくつ出品される?
3作品。は枝裕和「ルックバック」と塚本晋也「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」がコンペティション部門(金獅子賞競合)、三池崇史「襲名」がアウト・オブ・コンペティション部門に出品。
金獅子賞を取る可能性は?
コンペティション部門の作品が受賞する確率は低いが、日本映画は過去にも濱口竜介「悪は存在しない」(23年審査員グランプリ)のように好成績を収めた実績がある。特に是枝監督は95年にデビュー作「幻の光」で金のオゼッラ賞を受賞しており、ベネチアとの縁は深い。
市川團十郎の「襲名」とは?
歌舞伎の名門・市川家の当主が名跡を継承する儀式。13代目團十郎は2020年に襲名予定だったがコロナ禍で2年半延期。このドキュメンタリーはその波乱に満ちた過程を記録している。
三池崇史監督はベネチア映画祭に過去出品したことは?
2010年に「十三人の刺客」「ゼブラーマン」「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」が3作品同時公式上映されたのが最後。16年ぶりのベネチア復帰となる。今回は自身初のドキュメンタリー作品。