第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出された濱口竜介監督の最新作『急に具合が悪くなる(Soudain)』が、5月15日のプレミア上映で14分間のスタンディングオベーションを受けた。

パリ郊外で描かれる「生と死」と「友情」

本作は、パリ郊外の介護施設の所長マリールイ(ヴィルジニー・エフィラ)と、がん闘病中の日本の演出家マコト(岡本多緒)の交流を描いたヒューマンドラマ。フランスを拠点に活動するマコトが施設を訪れたことで始まる二人の関係は、病と向き合う中で次第に深まっていく。

マコトが日本へ帰国することになる結末は、マリールイの価値観と仕事への向き合い方に根源的な変化をもたらす。

原案は、宮野雅翁と磯野匡保の往復書簡を記録したドキュメンタリー書籍。濱口監督はこれをパリ郊外の介護施設という舞台に翻案し、日本とフランスの文化を横断する物語に再構築した。

14分間のスタンディングオベーション

プレミア上映が終わると、会場から「Bravo!」「Hamaguchi!」の声が上がり、観客は総立ちで拍手を送った。上映中も随所で笑いが起き、予想以上に温かい反応だったという。

濱口監督はカンヌでの反応について、次のように語った。

「予想以上に笑いが起きて、映画が違って見えた。観客と一緒に見ることで、この映画の新しい一面を発見できた」

出演者の岡本多緒も「この体験は一生忘れられない」と興奮を語った。プレミアには長塚京三、黒崎虹也も登壇し、キャスト一同でカンヌの舞台を飾った。

濱口監督にとって3度目のカンヌ・コンペ

濱口竜介監督にとって、カンヌのコンペティション部門は今回で3度目の選出となる。

作品結果
2018『Asako I & II』コンペティション選出
2021『ドライブ・マイ・カー』コンペティション選出、脚本賞受賞
2026『急に具合が悪くなる』コンペティション選出

『ドライブ・マイ・カー』ではアカデミー賞国際長編映画賞も受賞し、世界の映画界における日本監督の地位を不動のものにした濱口監督。本作で再びカンヌの最高賞パルムドールに挑む。

作品情報

  • タイトル: 急に具合が悪くなる(Soudain)
  • 監督: 濱口竜介
  • 出演: ヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒、長塚京三、黒崎虹也、ジャン=シャルル・クリシェ、マリー・ビュネル
  • 製作: ドイツ・ベルギー・フランス・日本の4カ国共同製作
  • 上映時間: 3時間16分
  • 撮影地: フランス・パリ郊外
  • カンヌ映画祭: 第79回コンペティション部門正式出品

エコプロ賞も同時受賞

本作はカンヌ映画祭の環境部門賞であるエコプロ・カンヌ2026も受賞した。映画製作における環境配慮が評価されたもので、コンペティション部門での高い評価に加え、持続可能な映画作りの観点からも注目を集めている。

受賞の授賞式は5月24日のクロージングセレモニーで行われる予定だ。パルムドールの行方とともに、濱口監督が再びカンヌの歴史に名を刻むかどうかが注目される。