韓国バンドHYUKOH(ヒョゴ)が約6年ぶりに発表した新曲『Godspeed!』のミュージックビデオに、日本の女優・安藤サクラが出演したことで、韓国ネットで大きな物議となっています。

批判の矛先は2つ。1つは光復節(8月15日)のわずか2日後という公開タイミング、もう1つは安藤サクラが第29代内閣総理大臣・犬養毅のひ孫(曽孫)であることが判明したことです。韓国メディアは「日本の戦犯の子孫」という見出しで報道し、一方で「犬養毅は戦犯ではない」という反論も出ています。

本記事では、炎上の経緯から論点、賛否両論、HYUKOH側の説明までを整理して解説します。

TL;DR(概要)

項目内容
発端HYUKOHが新曲『Godspeed!』MV(8月17日先行公開、音源8月18日配信)に安藤サクラを起用
批判1光復節(8/15)直後の公開は「配慮を欠く」との声
批判2安藤サクラが犬養毅元首相のひ孫で「戦犯の子孫」と韓国メディアが報道
反論犬養毅は東京裁判で起訴も有罪もされず、5・15事件で暗殺された人物
背景直前に韓国女優ハヨンの「親日派子孫」論争が発生し、敏感になっている時期
HYUKOH側「演技による没入感」を理由に起用したと説明、家族背景の把握度は未確認

何が起きたか:HYUKOH約6年ぶりの新曲と安藤サクラ

HYUKOHは2014年デビューの韓国インディーバンドで、ボーカル兼ギターのオ・ヒョクを中心に4人組で活動しています。日本では2016年のサマーソニック出演などで知られ、『Wi Ing Wi Ing』や『TOMBOY』などのヒット曲があります。

今回の『Godspeed!』は、2020年発表のEP『愛で(Through Love)』以来、約6年ぶりの新曲です。楽曲は「繰り返される日常と、その中で積み重なる無気力を率直に表現し、愛によって再び歩き出す物語」と説明されています。MVの監督はラフー(rafhoo)、カバーアートはアン・ミンジョンが担当しました。

このMVに起用されたのが安藤サクラです。HYUKOH側は起用理由について「彼女の演技によって作品に『より深みのある没入感』を加えたかった」という趣旨で説明しています。

なぜ炎上したのか:3つの要因

1. 光復節直後の公開タイミング

韓国の光復節は1945年8月15日の解放を記念する祝日で、8月15日です。今回のMVは8月17日、音源は8月18日の公開で、光復節からわずか2〜3日後。「この時期に日本人俳優を前面に出すのは配慮を欠く」という批判が相次ぎました。

2. 犬養毅のひ孫という家族背景

安藤サクラが犬養毅のひ孫であることが注目されました。犬養毅は1931年から1932年まで内閣総理大臣を務めた人物です。安藤サクラの母はエッセイストの安藤和津、その父(安藤の祖父にあたる)が犬養毅の三男で法務大臣を務めた犬養健という家系です。

さらに韓国では、犬養毅が1896年に残した随筆「如何に朝鮮を開化させるか」が批判の対象になっています。この文章は「日本人を指導する側、朝鮮人を労働力として見るような帝国主義的な認識を示した」とされ、韓国では批判的に語られることがあると報じられています。

3. 直前に起きたハヨン論争という背景

今回の炎上には、直前の韓国芸能界の出来事が影響しています。女優ハヨンが8月13日、MBCの報道で曽祖父の親日派疑惑を報じられ、自筆の謝罪文を公開する事態となっていました。

光復節を目前にしたこの時期、韓国ネットでは「親日派の子孫」というテーマへの感度が著しく高まっていました。韓国メディアは今回の安藤サクラ論争を、ハヨン論争と並べて報じています。

賛否両論:『戦犯の子孫』批判と反論

批判側の声

韓国ネットでは「光復節直後だぞ?」「犬養毅は戦犯だ!!」といった書き込みが拡散しました(楽観・まとめサイト報道より)。韓国メディアの中には「日本の戦犯の子孫」という見出しで報じるものもありました。

一方で、中央日報は「一部のユーザーは主演俳優の選定はより慎重にすべきだったと指摘した」と、必ずしも全員が一方的に批判しているわけではないと報じています。

反論側の声

日本のメディアや識者の間では、以下のような反論も出ています。

  • 犬養毅は戦犯ではない:犬養毅は極東国際軍事裁判(東京裁判)で戦犯として起訴されておらず、有罪判決も受けていません。むしろ1932年5月15日の五・一五事件で海軍青年将校らに暗殺された人物です。「戦犯の子孫」と呼ぶのは歴史認識として不正確だという指摘です。
  • 曽祖父の行動と本人は別:曽祖父の歴史的責任と、安藤サクラ本人の責任は分離して考えるべきだという意見です。
  • 本人の思想支持は未確認:安藤サクラ本人が特定の政治的立場を支持しているという情報も確認されていません。
  • 起用判断を断定はできない:HYUKOH側が安藤の家族背景をどこまで把握していたかは確認されておらず、「光復節直後の公開によって曽祖父の経歴まで掘り起こされ、議論になることまで想定していたのかも不明」と指摘されています。そのため「起用判断自体を、今回の議論だけを理由に誤りだったと断定することはできない」という冷静な論調もあります。

安藤サクラとは:韓国でも知名度が高い実力派女優

安藤サクラは1986年生まれの日本の女優です。『百円の恋』(2014年)や、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『万引き家族』(2018年)、『怪物』(2023年)などに出演し、日本を代表する実力派として高い評価を受けています。

韓国では映画ファンを中心に知名度があり、2025年にはチョン・ジュリ監督の韓国映画『ドラ』でキム・ドヨンと共演し、韓国映画に初進出。2026年5月には同作が第79回カンヌ国際映画祭監督週間に招待されています。4か国共同製作として注目を集めた作品です。

つまり今回の起用は「韓国でも知られる実力派俳優の登用」という面と、「歴史認識」という面が交差する、複雑な背景を持つ出来事でした。

まとめ

HYUKOHと安藤サクラのコラボは、音楽的な評価とは別の次元で「歴史認識」という重い問題に発展しました。

  • 光復節直後というタイミングと、犬養毅のひ孫という家族背景が批判の火種に
  • 直前のハヨン論争で「親日派子孫」への感度が高まっていた時期と重なった
  • 一方で「犬養毅は戦犯ではない」「先祖と本人は別」という反論も根強い
  • HYUKOH側の認識や意図は確認されておらず、今後の対応が注目される

日韓エンタメの交流が急接近するなかで起きた今回の論争は、今後も同様のケースが起きうることを示しています。続報があれば本記事も更新します。

FAQ

Q. 安藤サクラはなぜ炎上したのですか?

A. 犬養毅元首相のひ孫であることと、光復節直後の公開タイミングが韓国ネットで問題視されたためです。「日本の戦犯の子孫」と報じる韓国メディアもありましたが、犬養毅は東京裁判で起訴も有罪もされていません。

Q. 犬養毅とはどんな人物ですか?

A. 第29代内閣総理大臣(1931〜1932年)です。1932年5月15日の五・一五事件で海軍青年将校らに暗殺されました。韓国では1896年の随筆「如何に朝鮮を開化させるか」の帝国主義的朝鮮観が批判的に語られることがあります。

Q. HYUKOHはどんなバンドですか?

A. 2014年デビューの韓国4人組インディーバンドです。『Wi Ing Wi Ing』『TOMBOY』などのヒット曲があり、2016年にサマーソニックへ出演するなど日本でも知られています。

Q. 『Godspeed!』はどのような曲ですか?

A. 2020年のEP『愛で(Through Love)』以来、約6年ぶりの新曲です。繰り返される日常と無気力を表現し、愛によって再び歩き出す物語がテーマとされています。

Q. ハヨン論争とは何ですか?

A. 韓国の女優ハヨンが8月13日、MBCの報道で曽祖父の親日派疑惑を報じられ、自筆の謝罪文を公開した出来事です。光復節直前の韓国芸能界で「親日派子孫」への関心が高まっていた時期に起きました。

Q. 今後の展開はどうなりそうですか?

A. HYUKOH側が安藤の家族背景をどこまで把握していたかは確認されておらず、追加のコメントや対応が出るかが注目されています。日韓エンタメの交流が進むなか、同様の論争が再発する可能性も指摘されています。

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参考情報

  • 中央日報(japanese.joins.com)「HYUKOHの新曲『GODSPEED!』のミュージックビデオに出演した安藤サクラ」
  • ライブドアニュース(rbbtoday配信)「安藤サクラ起用で韓国バンドが炎上 急接近する日韓エンタメ、『不可避リスク』を乗り越えられるか」
  • 楽観(rakukan.net)「韓国バンドのMVに『犬養毅のひ孫』が出演で物議」
  • スポーツ韓国(fannstar)「HYUKOH、新曲『Godspeed!』発表」
  • スターNEWS(starnewskorea.com)「ヒョク、新曲『Godspeed!』発表…日本の俳優安藤さくら出演で論争」
  • 画像:Ando Sakura at Opening Ceremony of the Tokyo International Film Festival 2017(Dick Thomas Johnson / Wikimedia Commons / CC BY 2.0)